検閲という空気ー自由を奪うNG社会
    著/アライ=ヒロユキ 2200円+税 社会評論社

検閲、自粛、忖度、規制、クレーム。。
あらゆるNGの現状とその理由が本書に。


いま多くの検閲や規制が日本を蝕んでいます。その実情について紹介と論考を行ったのが本書になります。

具体的には、美術などの芸術に対する干渉や新聞報道の萎縮、歴史問題のタブー化とともに、お祭りの騒音苦情や湘南浜辺の飲酒禁止など、多岐にわたる事例を 取り上げ、社会の各所で深刻さを増している不自由な状況を取り上げました。包括的な視点を取るため、これらをNGと本書は名付けています。
識者や現場の人たちの取材と社会分析を組み合わせるかたちを取っていることも特徴です。表面的な現象紹介にとどまらず、その背景となる社会制度まで掘り下げ、その原因と突破口を論じています。



【本書で扱うNG(禁止、排除)例】

はだしのゲン』、強制連行追悼碑、五美大展、浜辺の飲酒、図書館の自由、慰安婦の美術、お祭りと除夜の鐘、九条俳句、保育所、人権博物館、NPO活動、外国人学校、生活保護受給、大学の自由、わいせつ問題、ほか

【序章】あらゆる領域で自由を阻害するNG。その不明瞭なもの

【第1章】日常生活のNGが示す地域社会の亀裂
保育所はなぜ地域社会から否定されるのか/それは不寛容か、生活の権利か/浜辺の自由をめぐるそれぞれの主張/利害のせめぎ合いがもたらす不自由/生活保護をめぐって注がれる監視の目/監視/防犯システムがもたらす、安全と管理

【第2章】地域生活から閉め出されつつある政治と宗教
祭りの喧騒が迷惑とされる理由/「平和・戦争」「憲法」は自治体から疎まれる/地域社会から政治性が排除される意味/図書館の自由を攻撃するのは誰か/良書主義ではなく機会の自由を

【第3章】美術に見る、表現とその自由の歪められ方
地域住民を無視した自治体の芸術エゴ/美術の二大検閲、わいせつと政治/美術作家が語る、美術館の自由のいま/学芸員が語る、美術館をめぐる自由の現状/真実を歪める、二次情報のありよう

【第4章】マスメディアでいかに自由が蝕まれているか
「公平性」が強いる報道の自由の危機/外の視点が批判する日本の言論姿勢/メディア文化を毀損する「配慮」の実態/放射能被害にいかにメディアが沈黙したか/生き残るためのおたく文化の試み/情報偏重と管理姿勢が自由を阻害する

【第5章】各地で封印されつつある歴史の真実
橋本内閣から始まった歴史への圧力/圧力を受入れた、ピースおおさかの実態/圧力を拒否した、リバティおおさかの選択/排除攻勢を受けた、強制連行追悼碑/史跡の説明板に対する「偏向」攻撃/負の歴史を地域に活かす試み

【第6章】一元性の圧力が教育を殺す
国旗と国歌が奪う大学の自律性/大学の自由の危機が意味するもの/外国人学校と教育の自由のあり方/自治体に封印された九条俳句/公民館が社会に果たす役割とは/NPOの活動を阻む自治体行政

【第7章】NGを生み出す社会背景とは
異物の排除と公権力依存の背景/近代社会が育んだ、不寛容の社会心理/平成の大合併が変えた地域の自由のあり方/自民党政権が推し進める国家統制策

【第8章】公共空間の確立をめぐる困難さ
情報環境の進化が日本の自由を阻害する/他者の視点で歴史を思考すること/感覚的判断の充満が人々の共約を阻む/学びとは民主主義に不可欠のプロセス

【第9章】公共性再生に必要な対話の手立て
形式論を超えた、言論表現の自由のあり方/ヘイトスピーチが「殺す」自由とは/その差別判定は本当に正しいのか/表現の多義性と公共性が求める姿勢/言葉の再生から始まる自由の回復



 

 坂内美和子&絵画教室アトリエMIWA