宇宙戦艦ヤマトと70年代ニッポン
    著/アライ=ヒロユキ 2300円+税 社会評論社


週 刊金曜日(2010年12月3日)、神戸新聞(2010年12月17日夕刊)、日本経済新聞(2010年12月22日夕刊)、琉球新報(2010年12月 29日)、月刊ニュータイプ(2011年2月号)、しんぶん赤旗(2011年1月16日)、読売新聞(2011年1月17日夕刊)、出版ニュース (2011年1月下旬号)で書評紹介。

1970 年代、『宇宙戦艦ヤマト』は熱狂的なブームを巻き起こし、アニメ大国の礎を築きました。この作品に制作者が込めたもの。それは、オイルショックによる経済 危機から多くの人の心に芽生え始めた進歩への疑い。そして、管理社会へと向かいつつあった時代からの脱出願望でした。古い戦艦が再生した姿には、今も色褪 せないメッセージが隠されています。
本書は、時代背景の分析だけでなく、制作者の証言、キャラクター考証、映像や物語構造の分析、BGM考察、マーケティング分析なども交え、伝説のアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の真の姿に迫ります。


【序章】時代の危機に、ヤマト復活
一九七七年、ヤマトは時代を動かした/新作を生み出せないアニメ産業のかげり/七〇年代のスローライフ宣言が意味するもの ほか

【第1章】サブカルチャーの誕生
パート1にこそ、ヤマトのすべてが/誰も見たことのない光景が、第一話で展開された/「世界」の創出がサブカルチャーの始まり/アングラ映画からサブカルへ受け継がれたもの/ヤマトのリベンジは海外進出から始まった/角川映画と劇場版ヤマト。映画界新参者の戦い ほか

【第2章】ヤマトの作者は誰?
西崎義展:時代への警鐘をくろがねの軍艦に託して/松本零士:戦争ではなく宇宙の大航海物語を/舛田利雄:古代進のルーツは石原裕次郎?/宮川泰:歌謡ポップス最良の伝統をヤマトに込める/軍艦マーチ事件。作品をめぐる解釈のズレ ほか

【第3章】大切なコトはみなヤマトから学んだ
老人の思想1 信念の男、沖田十三/老人の思想2 自由人、佐渡酒造/ヤマトは学園ドラマでもあった/森雪:料理下手はヒロインの証/熱狂的ファンを生んだデスラー総統の気品と狂気/ガミラス凡人伝:中間管理職の悲哀/目の前の現実より、魅力的なリアルがある ほか

【第4章】ヤマトは軍国主義か?
波動砲は殺すために使わない/決して「負けない」強さに心を熱くした/日本の外の視点を持とうとしない、大和フィクション/架空戦記と大和元乗組員の意識のズレ/七色星団の決戦:敵味方を超えた、人としての共感/ビーメラ星は植民地主義を告発する ほか

【第5章】西暦2199年、過去への旅
ヤマトのルーツは西遊記だった/ガミラス:科学信仰は宇宙帝国主義へつながる/イスカンダル:C・S・ルイスと自然法の愛の思想/未来への希望に裏づけられた物語、スター・トレック/過去に「新たなる希望」を求めた物語、スター・ウォーズ/科学者・真田志郎は、科学を憎んだ/相原義一が還るべき故郷は、岩手か? ほか

【第6章】孤独を脱した古代進が選んだ道
間違いだらけの古代進の選択/温和な平和主義者が好戦的に。古代進のトラウマ/宮沢賢治がマゼラン雲に込めたものとは/吉本隆明が透視する、ヤマトとガンダムを貫く宇宙教/オウム真理教が、ヤマトに託した夢/捕虜を殺そうとして、古代進は他者に気づく/戦争と競争社会の愚かさを初めて知る/リーダーシップを否定するリーダーシップ/対等に学び合う関係こそ、底力を引き出す ほか

【第7章】アニメビジネスの誕生
おたくを生んだ、消費文化の新ステージ/ファンの囲い込みという、ビジネスモデル/アニメ音楽という新市場の火付け役もヤマト/交響曲で狙った、脱子どものハイカルチャー路線/アニメプラモに、スケールモデルという発想を/『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』はどう受け止められたのか/時代は新展開へ。アニメ映画とアニメ雑誌の出現/仮想敵はヤマト! ガンダムの挑戦/クールジャパンの先駆け、ヤマトの愛され方 ほか

【第8章】続編検証:変節と不変のヤマト魂
『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』『宇宙戦艦ヤマト2』『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』『ヤマトよ永遠に』『宇宙戦艦ヤマトIII』『宇宙戦艦ヤマト 完結編』/自己犠牲で戦いの矛盾を昇華/ヤマトが敵に勝てない構造的理由/女神が誘う絶対平和の思想/デスラーはなぜ変わったのか/公共哲学から解き明かす、古代進の迷い/間違いだらけのヤマト批判〜佐藤健志&千田洋幸/オカルト思想・アセンションと『復活篇』の関係? ほか

【第9章】日本人乗組員だけが語れる物語
時代の閉塞が求めた日本再発見/角川映画とヤマトが交叉する地点/アニメはどう日本に取り組んだか〜宮崎駿&高畑勲、富野由悠季/在日とサンデル。共同体の再考うながすふたつの問題提起/ムラの再評価が意味するもの〜守田志郎/万博=進歩に突きつけられたNO〜アングラ芸術は裸体を武器に/戦後の忘却を揺さぶる、野性の肉体〜唐十郎/ヤマトが人間=身体性を強調する意味戦艦大和と宇宙戦艦ヤマトの断絶/崇高さを裏切り、過去を読み替えること/森雪の再生に託された、可能性という希望 ほか


 

 坂内美和子&絵画教室アトリエMIWA